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イノベーション理論と事業化の三つの関門

標準約 18 分技術開発戦略の立案・技術開発計画

概要

本ユニットでは、技術を事業へ結びつける考え方を理論として学びます。外部資源を活用するオープンイノベーション、既存企業がつまずくイノベーションのジレンマと市場普及の溝キャズム、そして研究から市場までの三つの関門(魔の川・死の谷・ダーウィンの海)を扱います。『なぜ技術が事業化で躓くか』を概念で押さえる、技術開発戦略の頻出テーマです。

用語6

オープンイノベーション

外部の知識や技術を取り込み自社の革新を加速させる戦略。

オープンイノベーションは、自社内だけで研究開発を完結させるのではなく、大学・他社・スタートアップなど外部の技術やアイデアを積極的に取り込み、また自社技術も外部に出して革新を生み出す考え方です。 社内資源だけに頼る従来型の「クローズドイノベーション」と対比されます。試験では、外部連携・産学連携・他社との共同開発などを通じて開発を加速する戦略であること、すべてを自前で抱え込まないという点が問われます。アウトソーシングと違い、革新そのものを外部と共創する点が特徴です。

たとえ自宅の台所だけで料理せず、近所の名店や市場のプロから食材も技を借りて新メニューを作るようなもの。外の力を借りて早く良いものを生む発想です。

記憶フックオープンイノベーションといえば外部の技術を取り込む革新戦略

イノベーションのジレンマ

優良な既存企業が破壊的革新に対応できず地位を失う現象。

イノベーションのジレンマは、業界で成功している優良企業が、既存顧客の声に応えて主力製品を着実に改良(持続的イノベーション)するあまり、安価で性能の劣る新技術(破壊的イノベーション)への対応が遅れ、結果的に新興企業に市場を奪われてしまう現象です。 「正しい経営判断をしたのに敗れる」という逆説がポイントです。試験では、優良企業ほど陥りやすいこと、原因が怠慢ではなく既存事業への合理的な集中にあること、破壊的イノベーションと結びつくキーワードであることが問われます。

たとえ売れ筋の高級時計を磨き続けた老舗が、最初は安物扱いだったスマートウォッチの普及に乗り遅れ、気づけば市場を奪われてしまうような状況です。

記憶フックイノベーションのジレンマといえば優良企業が破壊的革新に乗り遅れる

キャズム

新技術普及で初期市場と主流市場の間にある深い溝。

キャズムは、新しい製品・技術が普及していく過程で、新しもの好きな初期採用者の市場(初期市場)から、慎重な多数派の市場(メインストリーム市場)へ移る間にある「深い溝(キャズム)」を指します。多くの製品はこの溝を越えられずに普及が止まります。 採用者を革新者・初期採用者・前期多数派・後期多数派・遅滞者に分類するイノベーター理論(普及曲線)を前提とし、その中でも前期多数派の手前にある最大の難所です。試験では、初期に売れても主流層へ広がらず失敗するパターンとして問われます。

たとえ話題好きの一部の人だけが使う流行りのアプリが、慎重な一般層にはなかなか広まらず、そこに見えない大きな谷があるような状態です。

記憶フックキャズムといえば初期市場と主流市場の間の深い溝

革新者

初期採用者

キャズム(溝)

前期多数派

後期多数派

遅滞者

魔の川

研究から開発へ進む段階で直面する最初の関門。

魔の川(まのかわ)は、基礎研究の成果を、製品化を目指す開発段階へ移そうとするときに立ちはだかる最初の関門です。研究としては面白くても、開発テーマとして取り上げられず先へ進めない状況を指します。 事業化の三つの関門「魔の川→死の谷→ダーウィンの海」の最前段にあたります。試験では、研究と開発の間の壁であること、三関門の時系列で最初にくることが問われます。次の死の谷(開発と事業化の間)と混同しやすいので、どの工程間の壁かをセットで覚えることが重要です。

たとえ面白い実験成果ができても、それを実際に売れる商品の開発テーマに昇格させてもらえず、研究室の棚に眠ってしまうような最初の壁です。

記憶フック魔の川といえば研究から開発へ進む最初の関門

死の谷

開発から事業化へ進む段階で資金・資源が不足する関門。

死の谷(しのたに)は、開発した技術や試作品を、実際に量産・販売できる事業へと育てる段階で直面する関門です。事業化には多額の資金や人材・設備が必要ですが、それが確保できずに開発が頓挫しやすいため「谷」にたとえられます。 三関門では魔の川の次、二番目にあたります。試験では、開発と事業化の間にある壁で、資金不足が主な原因として語られる点が問われます。研究と開発の間の魔の川と、その後の市場競争のダーウィンの海との位置関係を、時系列で押さえることが大切です。

たとえ試作品まで作ったのに、工場を建てたり量産したりするお金が足りず、商品として世に出る一歩手前で力尽きてしまうような谷です。

記憶フック死の谷といえば開発から事業化への資金不足の関門

ダーウィンの海

事業化後に市場で競合と戦い生き残るための最後の関門。

ダーウィンの海は、製品を市場に出した後、既存製品や競合他社との激しい競争にさらされ、生き残りをかけて戦う最後の関門です。生物が自然淘汰の中で生き残る様子になぞらえた呼び名です。 事業化の三関門「魔の川→死の谷→ダーウィンの海」の最終段にあたり、市場に出してからの段階という点が特徴です。試験では、三関門の順番と、ダーウィンの海が「市場競争・生き残り」の壁であることが問われます。製品を出す前の死の谷と違い、出した後の競争段階である点を区別しましょう。

たとえようやく店に並べた新商品が、棚を奪い合う多数のライバル商品との売上競争にさらされ、生き残れるか試される大海原のような段階です。

記憶フックダーウィンの海といえば市場競争を生き残る最後の関門

研究

魔の川

開発

死の谷

事業化

ダーウィンの海

市場

まとめ

要点

  • オープンイノベーションは、外部の技術・アイデアを取り込み(自社技術も外に出し)革新を加速する戦略で、自前主義のクローズドイノベーションと対比される。
  • イノベーションのジレンマは、優良な既存企業が既存事業への合理的集中ゆえに破壊的イノベーションへの対応が遅れ、新興企業に敗れる逆説的現象。
  • キャズムは、新技術普及の過程で初期市場(初期採用者)と主流市場(前期多数派)の間にある深い溝で、ここを越えられず普及が止まる製品が多い。
  • 事業化の三つの関門は時系列で「魔の川(研究→開発)→死の谷(開発→事業化)→ダーウィンの海(事業化→市場競争)」の順に並ぶ。
  • 三関門はどの工程間の壁かが要点で、特に資金不足の死の谷と市場競争のダーウィンの海の違いを区別して覚える。

記憶フック一覧

  • オープンイノベーション: オープンイノベーションといえば外部の技術を取り込む革新戦略
  • イノベーションのジレンマ: イノベーションのジレンマといえば優良企業が破壊的革新に乗り遅れる
  • キャズム: キャズムといえば初期市場と主流市場の間の深い溝
  • 魔の川: 魔の川といえば研究から開発へ進む最初の関門
  • 死の谷: 死の谷といえば開発から事業化への資金不足の関門
  • ダーウィンの海: ダーウィンの海といえば市場競争を生き残る最後の関門

関連の過去問演習は今後のアップデートで追加予定です。